自由帳【番外編やおまけたち】
寺内さんが去り、周りの喧騒に取り残されるように私と佐々岡さんだけが残る。
「……」
「……」
沈黙が気まずい。ちらりと様子をうかがうと、佐々岡さんは私のことなど見向きもせずにジョッキを煽っている。
このままだと、先ほど寺内さんからもたらされた不可解な情報をぐるぐる考えてしまう。早々に耐えられなくなった私は、わざと明るい声を出した。
「佐々岡さん、いつもの作業着じゃないからべ、別人みたいですね」
しまった。思いっきり声が上ずってしまった。しかも咄嗟に口から滑り出たのは、心の中にしまっておこうと思っていた独り言だったもの。
またこうやって失礼なことばかり言ってしまうから、大事なことは聞けずに距離ばかり開いてしまうのに。
ところが、返ってきた言葉は予想外だった。
「……まさか会えるとは思ってなかった」
「え」
ぐいっと手元のジョッキを煽っている。喉仏が上下に動くのをしっかり見てしまい、慌てて視線を逸らした。
「いや、案内を送ったのはこっちなんだけど。前はよく呼び出されていたから、何か変な感じなんだ」
先ほどの私の余計なひと言が届いていない様子に内心胸をなで下ろしつつ、佐々岡さんの言葉に突っ込む。
「〝呼び出す〟なんて表現、仮にもお客さん相手に失礼ですよ」
「あんたは客って感じがしないんだよな」
「え?! ええと……それは、どういう……」
ーー意味でしょうか。
間髪入れず発せられた言葉に、思わず顔を上げる。唐突で意味深なセリフに、頭の中が真っ白になった。