自由帳【番外編やおまけたち】
てっきり一緒にお酒を飲んでいると思っていたのにそうではないことを知ったため、私の心中は複雑だ。感情に任せて佐々岡さんから離れようと一歩踏み出した時、強い力で腕を取られた。
「馬鹿、フラついてる」
「ヘーキです!」
「呂律回ってない」
「マワってます!」
しゃんと答えているつもりなのに、腕は解放される気配がない。それどころか、込められた力がますます強くなっている気さえする。
不意に自分の視界が暗くなったことに気付き、顔を上げるとまたしても佐々岡さんの顔が近付いていた。
「ひゃっ」
「さっきより顔も赤いし、どう見ても飲み過ぎだから」
確かめるように視線が顔中を行き来している。相変わらずのポーカーフェイスだが、瞳の奥が忙しなくゆらゆら動いているのは、多少は心配してくれている証拠なのだろうか。
気恥ずかしさに俯くと、半袖から覗く自分の腕が視界に入る。
言われた通り、肌が赤い。
服が白いせいか、余計に目立つ気がする。
そしてその腕を掴んでいる、男らしいしっかりした骨格のもうひとつの手。
予期せず触れ合っていることに、恥ずかしい気持ちと嬉しい気持ちがごちゃ混ぜになっていく。
「多分、飲み過ぎたせいじゃないと思います……」
思わずこぼれた独り言は、夏の夜風が連れて行ってくれた。