手をつないでも、戻れない……
 確かに、目の前にいるのは美緒だ。

 しかし、長い髪を大きくカールし、大きなリングのピアス。

 真っ赤な口紅に、派手な柄のブラウスに赤いミニのタイトスカート。

 どこかの、スナックの柄の悪い姉さんにしか見えない。



 なんと言ったらいいのか、すぐに言葉が見つからない。

 チラリと妻を見るが、やはり少し驚いているのが分かる。

 やはり、思った女性と違うとでも思ったのだろか?



「こんにには」

 彼女はそう言うと椅子に座り、鞄の中から一枚の名刺を出した。

 『スナックhana  マリ』珍しく、派手なネイルをした手で、名刺を妻の前に出し、長い脚を組んだ。


「こんにちは」

 妻もはっきりと挨拶を返した。


「ああ……」

 取りあえず俺は返事をする。



 注文を取りに来た友人のマスターに

「コーヒー」

 とだけ言った。


 マスターが去って行くと、彼女は軽く息をついた。


「で、何のお話しかしら?」

 彼女の口調は、いつもと違い、冷ややかなものだ。


「お分かりだと思いますけど」

 妻も冷ややかに言う。


 彼女はその言葉に、チラリと俺を見た。


「羽柴さんは、お店のお客さんですが、それが、何か?」

 彼女は、淡々と言葉を発した。
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