手をつないでも、戻れない……
「だって、私だってあなたを愛して結婚した訳じゃない。あなたを利用したようなもの……
でも、十五年という年月は、あなたへの気持を愛情へと変えたわ。由梨とあなたとの暮らしは、おだやかで暖かいものだったと思う。これも、一つの幸せだと思ってきたわ」
妻は穏やかで、少し滲んだ瞳を俺に向けた。
「俺だって、おまえや由梨の幸せを守りたいと思ったし、大切に思って来た」
この場の言い逃れではなく、俺の本音だった。
「わかっているわ…… でもね…… 私達には由梨が居たからなの……」
「ああ……」
俺は、妻と言おうとする事が、これからの俺達を変えて行く気がした。
「これから、由梨が居なくなって、私達どうやって生活していく? 私には、耐えられそうにないわ……」
「彩香……」
「ごめんなさい…… あなたに言われる前に、私から言いたかったの……」
妻は、一端口を閉ざし、息を整えると背筋を伸ばした。
俺も、妻の言葉を受けいれる覚悟をするかのように自然と背筋が伸びた。