求めよ、さらば与えられん
生暖かな風が流れる。目を閉じ、胸に手を当てた。静寂に包まれる中、心臓の音がやけに大きく聞こえる。


もしかしたら、もうここへは帰ってこられないかもしれない……微かにそんな不安が脳裏を過る。


恐怖心が表に出てしまわないように、笑顔で虚勢を張っていた。レミーとアウロラはそんな私の弱さに気付いているだろう。



「久しぶりだな」



背後からの低く落ち着いた声にドキッとした。気付かれないように小さく一息ついて振り向いた。



「久しぶりだね。 こんな所に来てていいの?」

「どういう意味だ」

「みんな忙しくしてるから……私も明日最前線に向かうよ」

「最前線?」



ジーン王子は驚いた顔をした。ただの薬師の配属先なんていちいち把握してないよね。



「レミーは友達のロアナに預けてるんだけど、もしも私が戻って来られなかったら、引き取ってもらえない?」

「何を言っている」

「貴方に凄く懐いてるし、私も貴方にだったら安心し__」

「そんな事を言っているんじゃない!」



怒った顔をするジーン王子の瞳は真剣だ。


深い闇の様な瞳だと思っていたのに、今ではその漆黒が何色にも染まらない高潔なものに思える。ジーン王子の強さを増幅させる色…そう思えてならない。





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