求めよ、さらば与えられん
どうして強くなりたいのかは分からないし、どんな風に強くなりたいのかも知らない。けど、この自信のなさの原因と何か関係があるのだろうと思う。



「今晩は新月だね」

「そうなの?」



空を見上げるのは好きだけど、月のサイクルまでは把握していない。


クリストフは星や月が好きなのかな?



「新月の日は闇か深くなるから、気を付けないといけないんだ」

「そうだね。 でも外を歩く時は灯りを持っていれば大丈夫よ。 もしかして夜お城を抜け出そうとしてる!?」



冗談っぽく言ったのに、クリストフの笑った顔は落ち着いていた。その表情をどう受け取っていいのか分からなくて口を噤んだ。



「人の灯りで本物の闇は照らせない。 だから新月の夜は決して出歩いてはいけない」

「クリストフ?」

「フラフラ出歩いている僕の唯一の決まり事! ははっ、ベアトリーチェにも知っててもらいたかったんだ」

「へ?」

「どうかこの言葉を忘れないで」



小指を差し出され、私も小指を差し出した。小指同士が絡まり合う。



「約束」



そう言ったクリストフの笑顔は安心させる様な柔らかな笑顔だった。私が「うん、約束」と返すと更に満足そうに笑った。





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