求めよ、さらば与えられん
ジーン王子の眉間のシワがどんどん深くなっていく。ついそのシワを人差し指でグイッと押してしまった。ギロっと睨まれ慌てて引っ込めた。



「変な事はされていないか」

「変な事? されてないよ。 っていうか変な事って何!?」

「……ないならいい」



さっきから何なの!?意味分かんない。


何故か室内はシーンと静まり返った。気まずい……。



「あ、えと……グレース王女って綺麗な人だね……」



会話に困ったからって私ってば何言ってんの!?自分で振った話題なのに、凄くつまらない気分になった。



「普通だろ」



表情を変える事なくそう言われて、どうしてなのか胸の靄(もや)が少し晴れる気がした。


あ!時間!



「私そろそろ戻らないと! 昼休み終わっちゃう!」



お昼ご飯食べる時間なかった……。


立ち上がろうとしたら腕を引っ張られ、無理やり座らされた。



「薬室長には午後は休ませると伝えている」

「え!?」



いつの間に!?



「そんな手では仕事にならないだろう? 周りの迷惑だ」



確かにそうだけど、そこまで言わなくてもいいんじゃないの?一言多いよ。



「え!? ちょっ__!?」

「少し寝る。 30分経ったら起こせ」



膝の上にジーン王子の頭が乗っかった。慌てふためく私の事なんか御構い無しに目を瞑っている。


心臓が煩い。今にも爆発しそうな速さで動いてる。


直ぐに寝息を立て始め、無防備な寝顔のジーン王子。第一王子という立場上、休む間も無く動いているんだろう。


艶やかな黒髪に触れると、見た目以上に柔らかくてサラサラしていた。あまりの触り心地の良さに、暫く手を離すことができなかった。





< 93 / 334 >

この作品をシェア

pagetop