【番外編追加中】紳士な副社長は意地悪でキス魔

雅さんと過ごした時間ばかりを思い出してしまう。
雅さん……雅さん……雅……。

天井の模様が歪んでいく。


「……っ」


瞳の上で膨らんだ液体が目尻から零れるのをこらえることができない。重症だ。こんなに、いつの間に好きになっていたんだろう。

雅さんの顔が恋しい。
雅さんの唇が恋しい。

苦しい。この苦しさから逃れたい。早く忘れたい。どうしたら早く忘れられる？

何か違うことを考えよう。思い出しそうになったら違うことを考えて、雅さんを思い出さないようにしよう。例えば。


プルルルル、プルルルル……。

着信音だ。誰だろう、私は起き上がり、テーブルの上のスマホに手をかけた。話している間は雅さんを思い出さなくてすむ。これで雅さんを忘れる時間が作れる。


「おっはよーございますっ！！　今日も朝から頑張る唐澤です！」
「……おはようございます」


助けに船、とは言えない電話に戸惑う。忘れるどころか雅さんを思い出してしまうではないか。