【番外編追加中】紳士な副社長は意地悪でキス魔

静かな空間にふたり、取り残されてしまった。空調の風の音だけが室内に響いた。


「大丈夫なんでしょうか」
「なんだ、キミからけしかけておいて」
「そうですね」
「咲希とケラオケにいったんだろう? 何を話した?」
「恋バナです。といっても相手が先生ってことだけで詳しいことは」
「その相手なんだが、たまたま俺の大学の同期でね。婚約者同然の幼なじみがいるんだ」
「じゃあ……」
「残念ながら無理だろう。でもそれが恋の醍醐味なんじゃないか? いろんな恋を経験して成長して、新しい自分になる」
「そうかもしれませんね」


私も今回のことでいろんな思いをした。橘さん、橘さんの新しい彼女、雅さん、咲希さん、唐澤さん。きっと雅さんも何かを知ったのかもしれない。それが何なのかはわからないけれど。それでもいい、私は雅さんが好きだし、これからもそれは変わらないのだから。

 
「わかったか?」
「な……なに、を?」
「俺がキミと結婚したい理由」
「わかりませ……ん……」
「わからないのか。じゃあ教えない。そのかわり、ほら」


雅さんはスーツのポケットから青いベルベットの小箱を取り出した。片手で器用にふたを開け、私に向ける。きらきらと輝くダイヤの指輪。


「あ……これ……」


たて爪のリングをつまみ、私の左手を拾い上げる。左の薬指にそっとはめられた。
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