【番外編追加中】紳士な副社長は意地悪でキス魔
「もう限界? ハニー?」
「だって……え?」


スカートの中からすうっと手が抜かれた。不意に意表を突かれて雅さんを見上げた。
優しく微笑む雅さん。いつもの雅さんだ。


「意地悪はこのくらいにしておこうか。もちろん君が望むならこのまま玄関で」
「そ、それはやめてください」
「とりあえず食事でも。一週間留守にしていたから冷蔵庫は空っぽだ。下のレストランにケータリングを頼もうか。何か飲むかい、ハニー。ワインとウィスキーなら常備してある」


雅さんは私の背中を押し、部屋へと案内した。広々としたリビング、カウンターキッチン。四人がけのダイニングテーブルの向こうは全面ガラス張り、きらめく夜景が望めた。

私を椅子に掛けさせると雅さんはスマホから電話をする。雅さんの名前といつものを二人前、と優しく言って通話を終えた。電話だから向こうに顔を見られることはないのに笑顔だ。誰とでも紳士に対応する。たとえこちらが得意先であってもえらぶることはない。

なのに。
さっきの彼はなんだったのだろう。

とりあえずワインかな、と鼻歌を奏でるように独り言をいい彼はワインを選び、グラスをふたつぶら下げてきた。
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