【番外編追加中】紳士な副社長は意地悪でキス魔
「紬……」


しっとりとした、艶やかな声質。
その声に背中がぞわりとした。
私を射抜くような眼差し、瞳。


「一目惚れしたから今の君と俺がいる。だから一目惚れがいやだなんて言わないでくれ。
ナンパでもワンナイトスタンドでもない。正真正銘の恋のはじまりだったんだから」


正真正銘の恋。そうだ。確かにそうだ。私は雅さんの人柄に惹かれて、雅さんも私のなにかに惹かれてそばにいる。唐澤さんが言うように、雅さんは海外での仕事を置いてまで私を得に帰国した。

私は何を怯えているんだろう。
雅さんの人間性を疑っているんじゃない。ただ、展開の速さに少し、戸惑ってるだけ。


「……あの、違うんです。なんだか怖くて」
「怖い? 威圧的だったか?」
「ち、違うの。その……初めてだから。こんな風に短期間で恋に落ちたことも、雅さんに抱かれることも」
「処女でもないだろう?」
「はい。でもなんとなく怖いんです。自分が自分でなくなりそうで。雅さんはあの夜を覚えてるでしょうけど、私には記憶が抜け落ちていて」
「そうだったね。でも大丈夫だよ。ちゃんとやさしく抱く」
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