【番外編追加中】紳士な副社長は意地悪でキス魔
私は、はい、ご名答です、という言葉を飲み込んだ。雅さんは先読みしている。私はさらに説明を加えた。


「市の意向としては郊外にある住宅造成地を発展させたいというのがひとつの目的で、40年前に作られたターミナルの抜本的な改修と生活便利な街というイメージ的アップを図って人口を増やす戦略のようです」


さっきまで何かを吟味する厳しい瞳をしていた雅さんは、力を緩めて、いつもの優しい顔になった。


「なるほど。わかった。ありがとう」
「いえ。でもなぜ急に。こういう数字や戦略のお話でしたらうちの部長とするべきではないですか? 私のような一般の社員では」
「キミの顔が見たかったからだ、ハニー」
「だからハニーって」
「日本語ならいいのか?」
「指フェチとか恥女は勘弁してください」


指フェチも恥女も認めますけど!、という言葉はあえて飲み込むことにした。


「じゃあ……」


斜め向かいの椅子に腰掛けていた雅さんは浅く座り直し、身を乗り出してきた。耳元に口を近づき、彼の吐息が耳にかかる。


「……ぎ」
「え?」
「紬」


小さな声で雅さんが呼んだ。吐息混じりの艶のある声にくすぐったさではない熱を感じた。背筋がぞくりとした。思わず肩をすくめる。わざとだ。


「や……やめてください。呼び捨てなんて」
「呼び捨てじゃなければいいのか?」
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