【番外編追加中】紳士な副社長は意地悪でキス魔
雅さんは長い指でずいとガラスのローテーブルの上にあったパンフレットを押した。三国不動産のロゴ入りパンフだ。湾岸に建築中のタワーマンションや区内に建てられたデザイナーズマンション、高級住宅街の新築物件など、住居に関するお客さま向けの資料だった。


「新居の候補なんだけど、どれがいい?」
「ど、どれって」
「キミと俺の新居。唐澤に聞かなかったか?」
「聞きましたけど。どうして偽の婚約なのにそこまで」
「怪しまれるから。こういうことはちゃんとしておかないと」


雅さんはパンフを手にしてパラパラとめくっている。


「縁談、どうして断りたいんですか?」
「タイプじゃないんだ、あの娘」
「咲希さんですか?」
「ああ。俺はロリコンじゃない。彼女は18歳、現役の高校生だ」
「そ、そうなんですか」
「正確には卒業式は終えたけどね。それと……」
「それと?」
「今はやめとく。とにかく決めて」
「こ、こんな高級物件なんて」
「住みたくないの? このタワーマンションは最上階だ」


雅さんはパンフを広げて私に見せる。大きな窓から見える海原、広いリビング、寝室の他に客間、和室、お風呂はサウナ付き。朝は日の出、昼は青空と海、夜は宝石を散りばめたような夜景。

近くには駅直結のショッピングモール、海沿いの大きな公園。生活便利な場所。

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