××夫婦、溺愛のなれそめ
うちの母だって、行事の時にはお弁当を作ってくれた。
面倒臭いってブツブツ言いながらも、ちゃんと周りの友達に見られても恥ずかしくないくらいのクオリティには仕上げてくれていた。
冷凍食品のおかずが入っていたって、やっぱりお母さんが詰めてくれただけで嬉しかったものだけどな。
「じゃあ、私があなたに愛情のこもったお弁当を渡した最初の人ってことね」
もう寂しくないよ。あなたには私がいる。
そう言ってあげたいけど、恥ずかしさが邪魔をして、冗談めいた言い方しかできなかった。
「そういうこと」
きちんとお弁当を蓋を閉めながら、レヴィはうなずいた。
「これ、いただいていい? 美味しそう」
話題を変えようと、真由さんが持ってきてくれたお菓子に手を出す私を見て、レヴィがハッとした表情を見せた。
「もちろんって……ごめん! 莉子もお腹が空いているよな。分けてあげればよかった」
すっかり軽くなったお弁当箱を見て頭をかくレヴィ。
「いいの、それはあなたのために作ったんだから。私は一日暇だし」
帰る途中でどこかに寄ればいい。一口サイズの羊羹をひとついただいて、お茶を飲んだ。