××夫婦、溺愛のなれそめ
一週間後。
「短い夢だった……」
悠々自適な主婦生活に終わりを告げ、今日からレヴィの秘書として一緒に出勤することになる。
いつもより早く起きて朝食とお弁当を作り、洗濯物を浴室に干し、通勤用の服に着替えてメイクを完璧にする。
「きついな……」
たった数か月の研修期間とはいえ、毎日これをやれって言われたらしんどい。仕事して、帰ってからご飯作って、洗濯物を畳んで……考えただけでうんざり。
結婚しても共働きしてる人って、本当にえらいと思う。それに加えて子供が何人もいる家なんて……私にはムリだ。
「莉子、僕がプレッシャーをかけてしまったかな。お弁当、しんどかったら作らなくていいよ。食堂や売店もあるし、困らないから。朝食も食パンを自分で焼くくらいはできるし」
初日の朝からちょっと不機嫌になっていた私の顔をのぞきこみ、レヴィが心配そうに言う。
「う、ううん大丈夫。」
この生活に慣れてしまえば、もう少し憂鬱さも軽くなるだろう。
憧れの主婦生活は、もう少しあとにとっておくんだ。なくなるわけじゃない。
そう自分に言い聞かせ、レヴィと一緒に部屋を出た。