××夫婦、溺愛のなれそめ
ひとりは男性で、二人は女性。いずれも二十代半ばから三十代前半に見える。
どの人も清潔感があり、服装もオシャレ。まるでドラマの登場人物だ。
「朝礼を始めます」
秘書室長である神藤さんが言うと、席についていた皆さんが立ち上がる。
「おはようございます」
神藤さんにならい、秘書の皆さんが綺麗なお辞儀をした。ぼーっと見ていた私も慌ててそれを模倣する。
顔を上げると、皆さんが私の方をじっと見ていた。
その視線はやはり、好意的とは言い難い。厄介者が来たな、という雰囲気が肌で伝わってくる。
「皆さんもうご存知だと思いますが、浅丘莉子さんです。今日から短い間ですが、この会社と浅丘CEO、および秘書室の仕事内容を理解するため、一緒に働いていただくことになりました。よろしくお願いいたします」
神藤さんが丁寧に私を紹介してくれる。
「浅丘です。よろしくお願いいたします」
ぺこりと頭を下げた。顔を上げると、神藤さんが淡々とそれぞれの名前を紹介してくれた。
一度では覚えられないけど、皆が胸に提げている社員証をのぞきみながら覚えればいいか。