××夫婦、溺愛のなれそめ
あっさりした紹介はそれで終わり。
ちょうど三つずつならんでいたデスクに付属するように置かれた、明らかに浮いているお誕生日席の机に向かって座るように指示された。
「はい、これ。我が社の資料です。すでにホームページなどで見たこともあると思いますが、もう一度おさらいしておいてください」
机の上に、どさりと資料の山が置かれた。
これ……全部読むの?
質問する前に神藤さんは自分のデスクに戻ってしまう。そして少しパソコンをいじり、スマホを操作すると、分厚い手帳らしきものを持って立ち上がった。
「では」
では……ではって?
立ち上がった神藤さんは、部屋の中から続くドアノブを握った。そこから続くのは明らかにレヴィの執務室だ。
もしかして、神藤さんいなくなっちゃうの?
嫌な予感は的中した。壁際にあるボードを見ると、神藤さんが朝からレヴィについて外出する予定が書きこまれている。
待て待て待て! もう少し責任もって私の面倒を見てよ~! 放置なんてあんまりじゃない!
もう二十代も半ばを過ぎた。アラサーになって転職し、全て一から手とり足とり教えてもらえるとは、さすがの私も思っていない。でも、これってひどすぎない?