眠り王子が人ではなかったのですが。
「俺、寝る」
突拍子もなく大路君は言うと、ゴロンッと寝転がった。
『私どきますから、足も上げて寝てください。しんどいでしょうその体勢』
上半身だけ倒して寝ている大路君。寝る体勢としてはかなりしんどいだろうと声をかけた。
「いいよ別に、俺どんな体勢でも寝れるから」
彼は大丈夫とでも言いたげに、手をヒラヒラと見せた。
嫌でも、しんどい体勢で寝る必要ないでしょ……やっぱりよけよう。
「大丈夫だって言ってるし、いいんじゃない??陽って立ったままでも寝るタイプだし平気だよ」
それでもと立とうとすれば、今度は雪島君に止められた。別によけるくらいいいんだけど。
それより、立ったまま寝るって凄いな。
「朱里が近くに居ると安心するんじゃろう。居ってやってくれ」
膝の上で丸まっていた茶々が顔を上げ、パカッと口を開き愉快そうに笑った。
「いらない事言わなくていい」
不機嫌そうな彼の声。それでも、内容は否定しないんだと少し笑みをこぼした。
さっき会ったばかりなのに、この場所はどんな所よりも落ち着く気がした。