繋いだ歌【完結】
「よかったよな! 来栖、あんな歌うまいと思わなかったわ」
「だよな~地味だけど」
「はは、確かに」
それは僕の話題で、咄嗟に隠れる。
すぐにそこから離れたらいいのに、僕の話というのが気になって留まってしまった。
「お前、最近仲良かったじゃん」
「え? 俺? いや、そんなことないよ。天才の考えることってやっぱ俺ら凡人には理解出来ないなってのは思った」
それは田所の声だった。
「天才ねえ」
「夏休み中、一歩も家から出ずに作曲だぞ? 信じられるかよ。ちょっと異常だろ」
「まじかよ。貴重な高校三年の夏休みなのにか」
「俺無理だわ~。付き合えないよ」
田所が言った言葉が僕の胸に突き刺さる。
唯一の理解者だと思っていた田所が、そんなことを考えていたとは思わなかった。
「才能は認めるけど、友達にはなれんわ」
それを聞いた瞬間、僕はその場から走り出していた。
ギターを背負って、家までの道をがむしゃらに走る。