繋いだ歌【完結】
「来栖さん、今日少しでいいんでお時間取れませんか?」
「……歌手になるつもりならないけど」
「いえ、そうじゃないありません」
「え?」
僕に歌手になれって話じゃないの?
首を捻ると新條さんが真剣な瞳を向ける。
「僕にプロデュースさせてください」
「……は?」
「詳しい話は場所を変えましょう。ここじゃ人目に付きすぎる」
もう僕が変な男の人に言い寄られていると、確かに噂にはなっていた。
僕としてはどうでもいいと思っていたから無視していたけど。
素直に頷き、移動した先は喫茶店だった。
「何飲みますか?」
「それじゃ、オレンジジュースを」
「わかりました」
そう言って店員を呼びとめると、コーヒーとオレンジジュースを注文する。
それから彼はすぐにカバンからなにやら茶封筒を取り出した。
封を開けて中から出したのは書類だ。
その書類を僕へと差し出した。
「……何ですか、これ」
「あの後、すぐに貴方のケーとしての楽曲を全て聞きました」
「全て?」
「はい。全て」
それを聞きながら無言で書類に視線を落とす。
≪アルバム制作について≫
一枚目に書かれていた文字を何度も読み直す。
アルバム制作……?