繋いだ歌【完結】
「やりましたね、ケー。オリコン一位ですよ」
「そう」
「……どうしたんですか? 嬉しくないんですか?」
その時、僕は高校を卒業していて、家を出て、ボロアパートに住んでいた。
パソコンに向かう僕にそう、声をかける真史。
表情はあまり変わらない真史だけど、声のトーンでなんとなく喜怒哀楽はわかるようになった。
「嬉しいことは嬉しいよ。僕の曲だし。
それにこの子、凄くうまいね」
「彼女は歌唱力の高さが売りですからね」
「でも、違うんだよね」
「……違う、ですか」
真史の声に困惑の色が浮かぶ。
自分の作った曲が売れて、うまい人に歌われて、他に何を求めているのだと世間には言われてしまいそうだ。
でも、違うんだ。
「あ、楽曲制作はどうでしょうか」
「順調だよ。今日中にはデモ出来る」
「そうですか。それとまたぜひケーにと依頼がありまして……」
「……うん、わかった」
差し出された資料を受け取り、僕は頷いた。
真史は「明日また来ます」とだけ告げて部屋を後にした。