繋いだ歌【完結】
資料に視線を落とす。
映画の主題歌。その内容とか、台本とか、キャストとかが書かれたもの。
こんなイメージで作って欲しいってこと。
それがイヤなわけじゃない。
求められることは光栄に思える。
僕自身に依頼が来るんだから。
でも、歌わせたい人は君じゃない。っていつも出来上がりを聞いて思ってしまう。
誰の歌? そう問われたら答えられないくせに。
いつもいつも君の曲じゃないって言葉を飲み込み、抑えて抑えて抑えていたから限界だった。
デモが出来上がり、それを机の上に置いてからメモを残した。
真史宛てに。
それから、僕は財布だけ手にすると部屋を飛び出した。
そういえば、誰かと最近遊んだりしていなかったな。
音楽を作ることばっかしていた。
真史に彼女でも作った方がいいと言われたけど、それはきっと真史が楽したいからだ。
僕は曲を作る以外何も出来ないから。
僕の存在価値ってなんなのだろう。
僕が出来るのは曲を作ることだけ。
当たり前のように出来たから、それが凄いことだなんて僕は思わない。
それなら、家事全般をこなしながら僕のマネージャーをしている真史の方がよほど凄いと思う。
顔もイケメンだし。真史こそ、なんで彼女を作らないのだろう。
仕事が忙しいだなんて言っていたけど……。
きっとモテるだろうに。こないだ会った新人歌手の女の子も真史をちらちらと見ていた。