和泉くんの考えてることはわからない。



「栞里」

「っ、!!」

「栞里のくせに俺に背向けるとか、生意気じゃない?」



少し不機嫌を装ってそう耳元で囁けば、彼女は分かりやすいくらいの反応を示してくれた。


気まずそうにしながらも俺とのこの距離に顔を赤くする彼女が、なんだか無性に可愛く見えてしまう。



「……ムカつく」

「…え?」



だからこそ、余計にあの時の光景が腹立たしくなるわけで。




───────グイ…ッ


「ちょっと来て」



人目なんて気にすることもなく、俺は彼女の腕を引っ張っていた。



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