“あなたを愛しています”








司君とは六時半に、いつもの交差点で待ち合わせをしていた。

だが、どうしても気になってしまって、六時前にはホテルを出た。

外の空気は相変わらず冷たく、コートの隙間を縫って容赦なく入ってくる。

その寒さに震えながら、出会ったあの日も寒かったな、なんて思った。

寒くて震えながら、彼のパスポートを延々と探したな。

あの時はいい迷惑だと思ったが、今となってはいい思い出だ。

関わりたくない変人だと思ったのに、まさかこんなに好きになるなんて。





司君を思うと胸が痛むと同時に、かぁーっと熱くなる。

司君は私を裏切ったのに、私はまだ彼を好きなんだ。


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