“あなたを愛しています”



ー花奈ー







「着物の乱れは気持ちの乱れ」




そんなこと言われても、どうしようもない。

だって私には、この短期間で着付けを習得することなんて不可能だったから。

かろうじて簡単に帯を結ぶことと、着物の向きに気をつけることが出来ただけだ。

一方、婚約者だと言われる女性は、淡いピンクの着物を上手に着ている。

それはもう、見惚れるくらいにピシッと。

そんな女性、長い黒髪を綺麗に結い、上品な顔で司君を見ている。

私よりもずっとこの家にふさわしい女だけど、負け惜しみはやめる。

司君の気持ちは私にある!

そう信じているから。


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