“あなたを愛しています”





そして、司君を見ると顔に血が上ってしまう。

いつぞやは変なアロハシャツなんて着ていたのに、今日の司君は和服だ。

その整った顔がさらにかっこよく見えて、胸のキュンキュンが止まらない。





司君と視線が合い、彼は泣きそうな顔をした。

そしておもむろに立ち上がろうとする彼を、弟子と呼ばれる人たちが止める。

そんな司君を見て、彼の父親はわざとらしく咳払いをした。

そして、



「桜子さん。見にくいところを見して、申し訳あらしまへん。

司、桜子さんはこの辺りを治めとられた藩主のご子孫や」



司君に言う。





そっか……

この人、桜子さんっていうんだ。

いかにもそれらしい名前に……藩主の子孫だなんて。

それに比べて私は……ただの醜い庶民だ。



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