“あなたを愛しています”




そこで、ようやくハッとした。

だって、変人が泣きそうな顔で私を見ていたから。

そしてそのまま、すみませんすみませんと頭を下げる。

そんな変人を惨めと思いながらも、怒りが治まるはずもなく、



「失礼します」



変人に背を向けて去ろうとした時……




「すみません……

でも、どうしてもお礼がしたかったんですぅ」




彼は弱々しく吐いた。




「花奈ちゃんの言う通り、見ず知らずの俺の探し物のために、貴重な時間を割いてくれました」




彼に背を向け続ける私に、変人は震える声で言う。




「俺はお礼がしたいと思ったのに……

さらにあなたを傷つけてしまった……」



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