“あなたを愛しています”
「花奈ちゃん、連絡してくれてありがとう」
待ち合わせ場所に立っていた司君は、私を見て柔らかな笑みを浮かべる。
その笑顔を見て、私まで釣られて笑っていた。
「待たせてごめんなさい」
そう言いながらも、ふと思った。
この人は常識のない変人だ。
見ず知らずの私に一時間もパスポートを探させたり、待ち伏せしたり。
だから今日の待ち合わせにだって遅れてくるかと思った。
それなのに彼は、寒い中身体を震わせて私を待っていてくれたのだ。
彼の手に目を落とすと、赤くなって微かに震えている。
この手を包んで温めてあげたいなんて思い、慌てて首を振った。