“あなたを愛しています”










「花奈ちゃん、連絡してくれてありがとう」




待ち合わせ場所に立っていた司君は、私を見て柔らかな笑みを浮かべる。

その笑顔を見て、私まで釣られて笑っていた。




「待たせてごめんなさい」




そう言いながらも、ふと思った。

この人は常識のない変人だ。

見ず知らずの私に一時間もパスポートを探させたり、待ち伏せしたり。

だから今日の待ち合わせにだって遅れてくるかと思った。

それなのに彼は、寒い中身体を震わせて私を待っていてくれたのだ。



彼の手に目を落とすと、赤くなって微かに震えている。

この手を包んで温めてあげたいなんて思い、慌てて首を振った。


< 59 / 353 >

この作品をシェア

pagetop