ほんもの。

昼は気付かなかったけれど、服装も少し違う。

「はい、なんか違います」

「忙しいときにごめん……」

「え、仕事と恋愛はつなげるものじゃないと思います」

そこで、矢敷さんがこちらを見た。

「部長がこっち見てます」

私たちはすすっと自分の席に戻る。「お疲れさまです」と先輩に視線を送った。

「女ってすごい。よくいつもと違うって分かったな」

矢敷さんはPCに向かいながら苦笑した。

「ちなみに女性は、いつもと違うところに気付いてもらえるととても喜びます」

「へえ」

今度灰澤さんをじっくり観察してみたらどうですか、と提案する。

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