ほんもの。

私は「帰ります」と返して、カレンダーにマルをつけた。

『そういえば、十和子。お兄ちゃんから聞いたんだけど』

「うん?」

『彼氏ができたって本当なの?』

兄よ。
何故それを話したんだ!

そしてそこまで言うなら、どうして相手が安藤だって……言わなくても良いけど。

「あ、うーん、まあ……あははは」

『どうしてそこを濁すのよ』

「だってお母さん、いつ結婚するんだとか煩くなるから」

私は母が散々兄にそう急き立てるのを見ていた。そして私もお見合い事件に巻き込まれた。

ペンを置く。

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