ほんもの。
料理が出来ないのと、しないのには大きな隔たりがある。
安藤がそれを怪訝な顔で見て、一歩近づいてくる。
「な、何?」
「いや、月白が離れたんだろ」
「今日は寝坊、というか、昨日気付いたら眠ってて。だから今朝、慌ててシャワーを浴びたので、髪の毛が濡れています」
「へえ、朝帰りかと思った」
は? と抗議の声を上げる前に、頭をぽんぽんと叩かれた。
「冗談」
「……心臓に悪い、色々」
朝から不覚にもきゅんきゅんしてしまった。唇を尖らせて、並んで進み始める。
もう並んでいても特に何か言われることはなかった。