ほんもの。

前までは結構、女性社員にこそこそ言われているのが分かったくらいなんだけど。

「年末だからか。この前、経理の部長が死にそうな顔で休憩室いた」

「鬼の忙しさだよね。この時期は」

「家来る?」

安藤の方を見る。首を傾げて尋ねる様子が何だか可愛い。

「そしたら夜はベッドまで運ぶし、朝は余裕を持って起こす」

「安藤と居るとダメ人間になっちゃいそうで怖いよー」

「なれば良いだろ」

エントランスに入ってエレベーターを待つ間、安藤を見つめる。

「……何ですか?」

痺れを切らしたようにこちらを見た。

「ありがとう」

ふふ、と笑うと、呆れた顔をされた。

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