ほんもの。
よたよたとベッドからおりて、手櫛で髪をいちおう整える。
玄関ドアのチェーンを外して、鍵を回す。ドアを開けると、勿論安藤がいた。
しかもちょっと不機嫌な顔。
「おはよう、ございます」
「おはよう」
「遅くなってごめんなさい……」
「別にそれは良いけど、大丈夫なのか」
ドアが開かれて、額に手を当てられる。その冷たさに思わず目を閉じる。季節は夏に変わろうとしているのに。
家に安藤がいる。変な感じだ。
キッチンに置きっぱなしになっているペットボトルと、昨夜食べて空になったパックを詰め込んだビニール袋を見て閉口しているけれど。