ほんもの。

まさか家の初訪問が今日になってしまうとは。誰が想像できただろう。

「あ、あの、お水飲みますか?」

「いい。昼飯食べたのか?」

「い、いいえ」

「朝飯は?」

無言で首を横に振る。分かってるから、そんな目で見ないでください。

「本当にさっきまで寝てたのか」

乱れたベッドの方を見て、呆れた顔をする。

「……うん、ごめん」

「全然連絡つかないから、何かあったのかと思った」

何かあった、と聞いて、私は眠りに落ちる前にうだうだと考えていたことを思い出した。
そう、安藤のことを考えていた。

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