ほんもの。
なんで、と聞かれても。
そこに理由があったら楽だったのにな、くらいにしか思えなくて。
「何でだろう、でも、好きじゃなかったのは本当なんだよ。安藤はああ言ってくれたけど」
「ワインふっかけられたのに」
「私が好きだったのは自分で、守りたかったのも自分だったからかも」
「月白」
肩に手が置かれた。安藤の方を向けば、安藤が私を見ている。
なんで、と聞かれても。
「鬱陶しい」
「……ひど」
「黙って聞いてりゃ自分が可愛いから自分が悪いみたいな持論かましやがって。そんなの家のヌイグルミにでも話しとけよ」