ほんもの。
安藤と同等ではなく、それ以下だ。
神様になりたいわけではないし、仏になりたいわけでもない。
じゃあ私は何になりたいのか。
「……どうして安藤を連れて来ちゃったんだろう」
なんだか自己嫌悪が深くなるばかりだ。ただ安藤にとってはこれも鬱陶しいことのひとつになるのだろうけれど。
ふっとこちらに腕が伸ばされた。
ぎぎぎと頬が引っ張られる。い、痛い。
「自分が可愛い人間が、わざわざ既婚者と恋愛したりしないだろ」
静かに言う。
でも私の頬は引っ張られたまま。
安藤の指は冷たかった。