ほんもの。

目が合う。あ、目の色黒くない。綺麗なこげ茶色だ。

「安藤の良いところって、他人を悪く言わないところだね」

「……部長のことは言ったけどな」

「それで、どんなに鬱陶しくても一緒に居てくれるところ」

笑うと、指の力が抜ける。するすると目の下を親指の腹が行き来した。

何か、と黙っていれば、

「月白の目、茶色いな」







髪留め忘れてったろ、と言われてそれを思い出した。そして安藤の家に寄ることになった。

良い所に住んでるな。安藤がカードキーを出しているのを見ながら思う。

カードキーって、私は今まで触れたことがない。

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