ほんもの。
同い年で同じ場所に勤めているというのに、生きてきた道に差があり過ぎる、なんて考える。
扉を開けて少し待っている安藤の後ろ姿を見たままでいると、こちらを振り向いた。あ、入れてくれるんですね。
「またお邪魔しまーす……」
少し寒いと思っていたからちょっとラッキーだ。玄関で待っていよう、と安藤が通れるように端に避けようとした。
肩を掴まれた。次は何か、と顔を見上げれば高いところにあった安藤の顔がぐっと近づく。
驚いた。なんて、思う前に唇が重なった。
頭の中は、エクスクラメーションマークとクエスチョンマークで一杯になり、それでも反射的にその身体を押し返した。