ほんもの。
甘い空気はどこへやら、だ。
「俺はあんたが捨てたものに少しも興味はないし、あと一つ忠告しておく」
人差し指でさされた。幼稚園で人を指さしちゃいけませんって習わなかったのだろうか。
「この部屋で他の男の名前を口にすんな」
「……亭主関白?」
チョップが落とされた。痛くはなかった。
ちょっと優しかった。
結局私は安藤の家に泊まって、安藤の作った料理を食べさせてもらい、揃って家を出た。
「安藤といると太りそう」
「俺が原因じゃない」
「それは分かってるけど。太ったら安藤の所為にする」
「何も分かってねえな」