ほんもの。

違う部署にも同期はいるし、話をしないわけではない。もしかしてこの場所を離れた瞬間にそんなことを、嵐のような噂話に巻き込まれてしまうんじゃないか。

「へえ、あの安藤と。月白と同期だっけ?」

矢敷さんが尋ねた。

「同期です。つい最近までちゃんと話したことも無かったんですけど……」

「ちゃんと話しなさいよ」

ばしばしとテーブルを叩いた先輩に、私はかいつまんでこれまでの話をした。

三島さんのことは隠したけれど、見合いをしたことなんかを。

「なるほどね。あの不愛想面だからどうかと思ったけど、大丈夫みたいね」

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