ほんもの。

伊勢先輩は頷いて言った。まるで私のお父さんみたいな言葉に、胸の奥が熱くなる。

立ち上がった先輩を見上げる。

「先輩、一生ついていきます」

「いや別に、お手洗いにはついてこなくて良いから」






目を覚まして、毛布を抜け出す。

リビングには安藤が起きて新聞を見ている。挨拶をすると、挨拶が返ってくる。

安藤はキッチンへ行って、何も言わずに朝ごはんの用意をし始めた。

安藤の家に泊まるときはいつも安藤が夕飯を作ってくれるし、手伝おうとすると無言の圧力をかけられる。

その結果、私はご飯を待つ犬の如く、床に座って待っている。

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