ほんもの。

安藤は正しい時計のようだ、と思う。

いつも同じ時間に起きて、ご飯を食べて新聞を読んでいる。それは私が泊まっても変わらない。

出された朝ごはんを食べているとき、安藤は私の後ろのソファーにいつも座る。私は大体テレビを見て、安藤は新聞を読む。

「あ、かわいい」

パン屋の特集をしていて、パンダの形をしたパンが紹介された。

私はヨーグルトを食べ終えてそれを見続けていると、安藤が後ろにおりて抱き締めてくる。

「うちの近くにあるパン屋さんも美味しいんだよ」 

「へえ」

「今度買って来るね」

ん、と返事が聞こえた。そしてついでのように耳を食まれる。

< 66 / 235 >

この作品をシェア

pagetop