ほんもの。
安藤は正しい時計のようだ、と思う。
いつも同じ時間に起きて、ご飯を食べて新聞を読んでいる。それは私が泊まっても変わらない。
出された朝ごはんを食べているとき、安藤は私の後ろのソファーにいつも座る。私は大体テレビを見て、安藤は新聞を読む。
「あ、かわいい」
パン屋の特集をしていて、パンダの形をしたパンが紹介された。
私はヨーグルトを食べ終えてそれを見続けていると、安藤が後ろにおりて抱き締めてくる。
「うちの近くにあるパン屋さんも美味しいんだよ」
「へえ」
「今度買って来るね」
ん、と返事が聞こえた。そしてついでのように耳を食まれる。