銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
「あなたは大人な女性になったわね。最初誰だかわかりませんでしたよ」

廊下を歩きながら和やかに話をするふたり。

その後をついていくと、昔俺がよくいた大部屋にたどり着いた。

小さな女の子が部屋の角にあるオルガンを弾いている。

その周りで他の子供達が歌ったり、積み木をしたりして遊んだりしていて……みんな変わらず元気そうだ。

院長を見て、子供達が集まってきた。

「ジェイ、肩車して!」

俺を見つけて両手を伸ばして肩車をせがむ男の子。

それを呆気に取られた様子で見るセシル。

近くにいた世話人の女性にリンゴの入った袋を渡し、男の子を肩車してやると、俺は彼女に説明した。

「実は子供の頃ここにいたことがある。大人になってからも、気になってちょくちょく顔を出しているんだ」

「子供の頃に?」

セシルは意外そうに俺の顔を見る。


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