銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
「もっと俺のこと知りたくなったかな?」

茶化すようにそう言えば、彼女は「全然!」とムッとした顔で言って、子供達にお菓子を配り始める。

「ね、ね、下ろして、ジェイ!僕もお菓子欲しい」

男の子を下ろすと、俺はセシルをじっと眺めた。

彼女が子供達に向ける笑顔は優しく、慈愛に満ちている。

それに……彼女もとても嬉しそうだ。

俺への態度とは大違い。

「子供達大喜びね」

ヒラリー院長が俺のところに来て楽しげに頰を緩める。

「そうですね。彼女は何度もここに来ているんですか?」

突っ込んだ質問をすれば、院長は「それは……」と言葉を詰まらせる。

「俺は彼女の正体を知っています。彼女のこと教えてくれませんか?悪いようにはしません」

声を潜めてそう言えば、ヒラリー院長は少し緊張した面持ちで俺を見る。

「彼女を捕らえたりしないと誓えますか?」
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