銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
俺も逃亡の身だったし、叔父を倒そうと必死だったからな。

そして、改めて思う。

叔父の残虐非道な行為は許せない。

セシルはどんな思いで逃げていたのだろう。

子供達にお菓子を配り終えた彼女は、女の子にせがまれオルガンを弾き始めた。

それは誰でも知っている賛美歌で周りにいる子供達がオルガンの音に合わせて歌い出す。

その光景を見て、胸が温かくなった。

心が穏やかになって癒される。

このまま眺めているのもいいが……。

セシルの横に行き、オルガンに手を伸ばして連弾すれば、彼女は目を見開いて俺を見た。

「手、止まってる」

クスリと笑ってセシルにそう指摘すると、最初はぎこちなかったが、俺の存在にも慣れたのか楽しそうに連弾する。

教養のひとつとして仕方なく習ったオルガンだったが、今は習っていて良かったと思った。

心安らぐ時間……。
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