銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
普通なら怯えるのにな。

「どうやらそうみたいだ」

小声でそう答えると、彼女は何か思い出したように「あっ」と小さく叫んだ。

「右端の顔に傷のある男、私の乗った馬車を襲った奴よ。捕まったんじゃなかったの?」

セシルは俺に教えながら驚きの声を上げる。

だが、男達が襲いかかってきて、剣で相手の攻撃をかわしながら後ろにいる彼女に確認した。

「それは近衛兵が捕まえた奴がここにいると言いたいのか?」

「捕まったところは見ていないけど……」

セシルは突然そう言葉を切ると、俺の腰に手を伸ばして剣の鞘を引き抜き、背後に回った敵の攻撃を防ぎながら「あのオークションの場にはいたのよ」と続ける。

「なかなかやるじゃないか」

男達の相手をしながらセシルを褒めると、俺と背中を合わせ、鞘を盾がわりにしてフッと笑った。

「あなたもね」

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