銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
「手当てなんて必要ないわ。自分の部屋に戻ります!」

激しく動揺してベッドから立ち上がろうとしたら、彼にギロッと睨まれた。

「傷のところが壊死して腕を切ることになったらどうする?」

思わずその怖い眼光に怯んでゴクリと息をのむ。

これは……もう逆らえない。

自分の部屋に戻るのを諦め服を脱ごうとするが、服は濡れているし、腕が痛くて前のボタンを外すことが出来ない。

顔を歪めて唇を噛み、痛みをこらえた。

怪我をした時は敵がいた緊張もあってあまり痛みを感じなかったが、結構深く傷ついたのかもしれない。

……彼に見せたくない。

「痛いんだろう?無理はするな」

少し優しいジェイの声がしたかと思ったら、その手が伸びてきて私の服のボタンに触れた。

恥ずかしさと緊張でハッと息が止まる。
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