銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
「痛い……」

まるで塩を傷口に塗り込んでいるような痛みだ。

ギュッと目を閉じて痛みを堪えていたら、背後からチャポンと水音がした。

「傷を治すためだ。しばらくこのままでいるんだな」
と言ってジェイが風呂に入ってくる。

彼の肌が触れドキッ。

だが、それだけでは終わらない。

背中にピタッとジェイの身体が密着して、その吐息を感じた。

な、なんで彼も一緒に浸かるの〜!

衝撃で黙り込む私の頭に手をやり、彼は私のカツラを外して無造作に床に落とした。

「ちょっと!何を……‼︎」

振り返って文句を言おうとしたら、彼の腕の傷跡が目に映り、ハッと言葉を呑み込む。

そして、無意識にその傷跡に触れた。

これは……五年前負傷した時の……?

「……痛くない?」

彼に傷跡を指でなぞり、呟くように聞けば、彼は呆れ顔で返す。
< 125 / 263 >

この作品をシェア

pagetop