銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
優しい彼の声音。

「ええ」

彼に身を預け、小さく頷くと、両親が亡くなってから男爵令嬢の身代わりで宮殿に来るまでのことを彼に正直に話した。

ウィングが死んだことも伝えると、彼は沈痛な面持ちで相槌を打つ。

「そうか。ウィングはセシルを守って死んだのか。辛かったな」

ジェイにそう声をかけられ、涙が込み上げてきた。

ギュッと唇を噛み締め嗚咽を堪える。

「我慢するな。俺が全部受け止めるから」

その言葉が私の心の鎧を剥がしていく。

ああ……泣いていいんだ。泣いて……。

今までずっと感情を抑えてきた分、彼の腕の中で思い切り声を上げて泣いた。

この人の前では本当の自分に戻っていいんだ。

もう自分を誤魔化さなくていい。

辛かった。苦しかった。そして……悲しかった。

死んでしまいたいと何度思ったことか。

< 127 / 263 >

この作品をシェア

pagetop