銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
でも……生きているからこうして彼に会えたんだ。

「お前が生きてて良かった」

ジェイは私の頭を優しく撫でながら微笑む。

胸にスーッと浸透していくその声を聞いて初めて暗闇から救われたような気がした。

「ジェイ……」

思い出の中にしかいなかった彼がここにいて、私を抱きしめてくれる。

それだけで胸がいっぱいで……時間が経つのを忘れた。

「……もう悔いはないかも」

そんな言葉をつい口にすれば、ジェイに怒られる。

「こら!まだ二十歳かそこらだろう?死ぬのは早いし、お前に死なれては困る」

それから、風呂を上がると、彼の寝間着を着せられた。

そして、椅子に座らされ、彼に傷の手当てをされている。

患部に薬を塗っているジェイがまた怪我のことでお説教しそうな雰囲気だったので、こちらから別の話題を口にした。
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